ムサビ通信の実態

武蔵野美術大学通信教育課程の実態を解説

「ムサビ通信は卒業が難しい」って本当なの?

ムサビ通信は卒業が難しいというのは本当か?

結論から言えば概ね本当と言える。

まず、一応の目安として卒業率から考えてみよう。公開されているデータを見ると、ムサビ通信の卒業率はざっくり2割前後とある。
これはつまり、100人入学したとしても、70~80人程度は卒業できずに退学しているという事だ
「留年せずに卒業した人」となると、この数字はさらに厳しいものになる。

しかしながら、通信制美大という特殊な環境のため、難易度とは無関係な理由で退学する人(子供が生まれて学習の時間がとれなくなり退学、など)もいる。
そのため、インパクトのある数字ではあるが、あまりこの数字に惑わされすぎないようにしたい。


また、ひとことで「ムサビ通信は難しい」と言ってもそこには様々な難しさがあるため、このページではそれを解説していく。
この記事の執筆者は通学制の芸術系大学も経験しているため、通信、通学双方の目線で見ていく。

 

ムサビ通信の難しさ

ムサビ通信のことをネット等で調べると、「卒業が難しい」という噂(?)に行き着くことがよくある。
そして実際、卒業する難易度だけなら通学のムサビ(武蔵野美術大学)よりも難しいと言われている。
ただ、通学のムサビは(学科にもよるが)入学試験が難しいため、入学が難しい通学過程と、卒業が難しい通信課程、という事で一応のバランスをとれているのかもしれない。

また、他の通信制美大(※1)と比較しても、卒業の難易度はムサビ通信が最も高いと評されることが多い。
※1京都芸術大学大阪芸術大学の通信課程。卒業率や単位取得率等を見るに、概ね正しいとは思う

しかし、ここまで「ムサビ通信は難しい」を連発してきたが「じゃあムサビ通信と医科大学の医学部を卒業するのとどちらが難しいの?」と問われれば、当たり前だが医学部を卒業するほうが100倍難しい。
また、他の通信制の大学との比較でも、慶應義塾大学や法政大学の通信課程と比較した場合は、慶応や法政のほうが難しいと思われる(ジャンルが違うので一概に比較はできないが…)。

 

このあたりを総合して「では実際どの程度の難易度なのか?」を簡潔に言い表すのは困難なので、それはこの後の本文を読んで各自判断していただきたい。

 

要因1 単位取得の難しさ

これは比較的イメージのしやすい難しさで、ようは単位を取得するための難易度が通学の美大よりも厳しいから、卒業も難しくなってしまうという理屈である。

具体例を上げると、例えば「心理学」とか「西洋美術史」のような、いわゆる一般教養と呼ばれる講義は、通学の美大であれば「ラクに単位がとれる授業」の代表格であることが多い。
もっとも簡単なケースになると、とりあえず講義に出席してさえいれば、期末に簡単なレポート(感想文)を出すだけで2単位とれてしまう…なんて事もあったりする。

これがムサビ通信の場合は、分厚い教科書を通読した上で課題にそったレポートを2回も出し、それに合格すると最終テストを受けられる権利が得られ、そのテストに合格することでようやく2単位もらえる…というパターンが多い。

 

また、「与えられた課題を自宅等で制作して教授や講師に郵送する」というタイプの授業の場合、何十時間もかけて制作した作品やレポートであっても、求めるクオリティーに達していなければ容赦なく再提出になり続ける…という場合もある。


しかしながら、ムサビ通信の中にも簡単に単位がとれる科目は存在する
ようは、通学だろうと通信だろうと、単位取得の難易度はその科目によってマチマチであり、一概に言えるものではないのだ。

ただ、その中でもムサビ通信は単位取得が厳しめと言われている科目が多いため、「卒業が難しい」とか「単位取得が難しい」等と評される事があるのだと思う。

 

要因2 通信制特有の難しさ

ここからは通信制特有の難しさについて見ていく。
わかりやすく箇条書きで書き出してみよう。


・自ら進んで机に向かう必要がある

・その上である程度の計画性が必須

・その上である程度の継続力も必須

・いわゆる「出席点」が存在しないため、テストの点や作品のクオリティがより重要になってくる

・わからない所や疑問点をすぐに講師に質問できない(質問ができる制度自体はある)

・教科書の通読を求められる事が多いため、読書が苦手だと厳しい戦いになりがち

・通学の大学よりも友人知人ができにくいため、モチベーションの維持や試験対策などがやりにくい

 

この記事の執筆者は通学制の芸術系大学も経験しているが、文系・芸術系の通学制大学の場合「きちんと大学に行ってさえいれば、なんとかなる」という場合も多い。

ところが通信制の場合は、原則進んで自主学習を継続しなければ何も始まらないし終わらないため、このあたりが地味だが大きなハードルになっていると感じる。

 

要因3 両立することの難しさ

ムサビ通信の学生は、普通に仕事をしている社会人や、子供がいる主婦(主夫)の方も多いため、その場合は大学と仕事等を両立することになる。

仮に、フルタイムで仕事をしている人がムサビ通信を留年せずに卒業しようとしたら、平日に仕事をこなしつつ、通学の大学生と同じかそれ以上の量の勉強をしなければならないため、当然のごとく難易度は高い。
個人的な感覚ではそんな事はほぼ不可能に近い。

ただ、ここに関しては単純に時間の問題であるとも言えるので、1年生からの入学であれば、5年~6年かけてゆっくりと卒業を目指すことで難易度を減らすことができる。

通学の美大で留年する人は稀な存在だが、ムサビ通信では留年せずに卒業できる人のほうが少数派だ。

そのため、留年は当たり前だと思って無理のない学習ペースを考えよう。

 

おわりに

ここまでムサビ通信の難しさについて記してきましたが、反対にムサ通特有の「ラクさ」みたいなものも少しはあったりするので、いずれ記事にしようと思います。